Craftsmen

Interview KUNIKO SHINOKI
裁断チーフ:篠木 邦子

これをやったらあれをやって、
あっちこっち動き回ります。

裁断は、縫製が滞りなく行われるように必要なパーツをとにかくはやく送り出さなくてはいけません。一枚の布からスーツになるためのパーツを切り抜き、縫製に向けての準備を整える。裁断といっても、布を一枚一枚並べることも、スーツに必要なパーツを確認することも、細かいパーツとパーツを合わせることも大切な作業です。
量産のスーツとオーダーのスーツでは裁断に使用する機械や流れが異なり、限られた機械と人員をどう効率よく動かすかが一日の裁断数に大きく影響します。人の手と道具だけを使って裁断していた頃と比べれば、遥かに生産性が上がっていますが、ぼーっとする時間は今もありません。

どうしても、
人の手が必要な場所。

裁断の際に、特に気を遣うのは格子柄の生地です。オーダーの場合、スーツのサイズやパーツはひとつひとつ異なるため、一枚一枚布を広げて機械によって裁断します。この時、格子の柄が全体が均一に真っ直ぐ広がっているか確認する必要があります。生地は場所によって癖があったりなかったりするので、人の手で均等に伸ばして柄の位置を確認するため時間と手間がかかります。量産の場合でも、生地を重ねて裁断するため格子の角を揃えて重ね合わせるのに必ず人の目が必要になります。
柄合わせに限らず、芯の接着やミリ単位でのズレの把握、“どうにかしないと”と考える役目はいつも人にあります。そうした細かい積み重ねが品質を左右するため、正確なものを生産し続けるには柔軟に対応出来る人の存在が貴重だと改めて思います。
力のかけ具合でズレてしまう布の抑え方ひとつとっても、これだけ臨機応変に工夫できるのは人だからこそなのではないでしょうか。同じチームの人間が一日中周りを見渡してよく動いている姿を見ても、やっぱり人だなぁと感じます。

複雑な方が、
好きなのかもしれない。

もともと洋裁が好きで、ものをつくる仕事に関われたらと思って入社して以来、裁断を担当していますが不思議と飽きたことはありません。とにかく数をあげないと、と毎日必死で、思い通りにいかなくて悩むことも、細かい積み重ねが面白いと感じることも両方ありました。
裁断に求められているのは、正確にかつスピーディーにパーツを揃えるということ。そのためには、神経を使うところと気を緩めていいところを理解することが大切だと思います。模様によっても、その生地が使われる場所によっても、布の重ね方や裁断の仕方、取り掛かる順番など少しずつ異なりますから。
効率と品質のどちらも取りこぼせないからこそ、ゆっくり迷っている時間はありません。裁断という言葉ではシンプルな作業でも、複雑なパーツの組み合わせによって成るスーツでは課題が尽きません。裁縫でも編み物でも昔から難しい方を選びがちな私には、向いているのかもしれないですね。